明治乳業「KIHON」と新サイズ250g缶


 明治乳業「KIHON」シリーズは1992年、同社が本格的に缶飲料に参入した際企画された製品である。

●新サイズ250g缶の開発経緯

 当シリーズ一番の特徴はこの製品のために製造されたコップサイズの250g缶である。日本人にとって飲料の適量250gを科学し、持ちやすく手になじむサイズ、かつ外見からも他社商品との差別化が図れるサイズとして、新しいサイズの缶が誕生した。

各サイズの缶との比較(190g/新250g/350g/250g)

●広告戦略

 缶飲料業界への本格的参入に当たって、広告も手の込んだ広告を制作した。
 キャッチフレーズは「新・放課後飲料」。新聞の全面広告にて開発ストーリーを劇画で紹介したり、CMキャラクターにも、キャッチフレーズにふさわしいキャラクターとして、女優の高橋かおり(当時17歳)を起用、テレビ、雑誌、駅貼り、電車吊りなど、ターゲットである中高校生に対し重点的な宣伝を行った。

新聞広告(3日連続)と高橋かおり表紙のカタログ

●製品の内容を表示したパッケージ

 製品の内容についても、酸度、糖度、パルプ分を調整し、100%果汁ながらすっきりした味わいを出すことができた。このおいしさを「味わい指数」として缶に表示した。
 このような広告、パッケージが企画できたのは、広告デザイナーが商品企画の時点から参加していたためである。

●当初発売の5アイテム

 以上、メーカー自身大きな期待を持って企画された「KIHON」シリーズは、当初以下の5アイテムが1992年3月1日に関東、広島、福岡で先行発売され、7月より全国発売された。

1)基本珈琲/4902705037724/250g
2)基本紅茶/4902705037731/250g
3)基本オレンジ/4902705037748/250g
4)基本アップル/4902705037755/250g
5)基本グレープフルーツ/4902705037762/250g

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 しかしながら、メーカーの思惑は大きく外れた。その後ブルガリアのむヨーグルト(飲用)やレモン果汁などのアイテムを追加したが、「KIHON」は期待したほどのヒットとはならなかった。なお、「KIHON」シリーズは現在でもオレンジ・アップル、グレープフルーツの3種類についてパッケージを変えて販売されている。

 新サイズ250g缶についても、飲用・陳列・保管等には適度なサイズではあるが、今までの250gロング缶を凌ぐ程の普及はしていない。既存の飲料メーカーでも積極的に使用しているのはキリンビバレッジ程度である。同社「ジャイブオリジナルブレンド」は新発売当時から新サイズ250g缶を使用している数少ない製品である。

●ジャイブオリジナルブレンド(新サイズ250g缶の使用例)

6)ジャイブオリジナルブレンド/4909411216511/250g/1993年
7)ジャイブオリジナルブレンド/4909411216511/250g/1994年
8)ジャイブオリジナルブレンド/4909411251116/250g/1995年
9)ジャイブオリジナルブレンド/4909411249816/250g/1996年

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