キリン「ポストウォーター」

 「ポストウォーター」はキリンビバレッジ(当時は麒麟麦酒)のスポーツ飲料「サーフブレーク」の後継として90年に発売された。当時、スポーツドリンクというと大塚「ポカリスエット」、コカ・コーラ「アクエリアス」に代表されるアイソトニック(浸透圧)飲料が主流を占めていたが、「人間科学飲料」というユニークなキャッチコピーが示すとおり、ポストウォーターはひとひねりを加えたユニークな成分となっている。

 販促資料によれば、成分の特徴として、(1)体液に近い浸透圧、(2)低カロリー、(3)ソルトフリー、(4)大豆サポニン配合、(5)ミネラル・ビタミンC添加が記載されている。特に(3)のソルトフリーに関しては、一般的なスポーツ飲料の場合、浸透圧とするために塩化ナトリウム(いわゆる食塩)、クエン酸ナトリウム、L-グルタミン酸ナトリウム等のナトリウム塩が成分として配合されているが、ポストウォーターに関してはこれらのナトリウム塩は入っていない。しかしながら、キリンのソフトドリンク全般に言える「ムード(雰囲気)よりもハード(成分効能)優先コンセプト」のせいか、一般的なスポーツ飲料と味が異なるため、「うまい」よりも「まずい」と思う人が多かった用に思える。CMにブルース・ウィリス、細川ふみえ、森毅、大槻ケンヂなどの有名人を起用していたのも「商品に自身の無いときにはタレントに頼る」という広告業界のお約束に則ったものであろう。

 以上、「スポーツドリンクのお約束」に反したため売れなかったポストウォーターであるが、容器、特にワンウエイガラス瓶については飲料パッケージ史に必ず残るであろうと思われる物を輩出している。まずは「人間科学飲料」ということで企画され、マガジンハウス「ポパイ」誌の「デザイン・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれたフラスコ形のボトル、次に「右手で握る」(瓶にそう書いてある。私は左利きなので、左利き用も作って欲しかった)ように設計された「グリップボトル」、瓶の下半分にねじりを加えた「ツイストボトル」と、発売された3種ともユニークな形状をしている。

 商品的には現在ヒットしているサプリメントウォーター「サプリ」に道を譲り、商品としての寿命は終わったと思われるポストウォーターであるが、99年春カタログにもまだ掲載されている現役商品である。缶のパッケージデザインも93年以降変更されていない。

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1)ポストウオーター/キリンビバレッジ/4901411261010/340g/1991年
2)ポストウオーター/キリンビバレッジ/4901411261010/340g/1992年
3)ポストウオーター/キリンビバレッジ/4909411210113/340g/1993年

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4)ポストウオーター フラスコ/キリンビバレッジ/4909411100612/500ml/1991年
5)ポストウオーター グリップボトル/キリンビバレッジ/4909411284213/1000ml/1992年
6)ポストウオーター グリップボトル/キリンビバレッジ/4909411210410/1000ml/1993年
7)ポストウオーター ツイストボトル/キリンビバレッジ/4909411210311/500ml/1993年


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