そふとどりんく・とーく 第11回

   缶と鉄

 以前書いたことがあるが、5歳から
11歳まで新潟市天神尾の線路端(現在
道路公団の寮があるところの向かい)
に住んでいた。そこには父が勤めてい
た菓子問屋があり、隣にあった寮の二
階で暮らしていた。菓子倉庫の中を遊
び場にしていたことが、清涼飲料水を
はじめとする食品関係のライターにな
る伏線となっているわけだ。
 家からは、新潟駅に出入りする電車
や機関車、当時まだ走っていたSLな
ど、上越新幹線開通前のバラエティに
富んだ車両をたくさん見ることができ
た。胎内で植樹祭があったときに走っ
た「お召し列車」も、運良く試運転か
ら見ることができたのは一生の思い出
になるだろう。
 その結果、私は見事に「鉄ちゃん」
(鉄道マニアの意)になってしまった
のだ。そう、天神尾の家は鉄ちゃんの
純粋培養には格好の場所だったのだ。
学生時代から結婚直後までは鉄道模型
にハマっていたが、それからは鉄道旅
行が中心になった。夫婦での旅行は鉄
道での移動がメイン。東京に住んでい
た頃、名古屋や金沢まで普通電車だけ
で行ったこともあった。缶ジュースを
集め始めてからも、最初は鉄道旅行の
オマケで缶を集めているようなものだ
った。
 さて、ここからが本題。インターネ
ットが普及してから、日本全国の清涼
飲料水愛好者と交流ができるようにな
り、掲示板、メール、オフ会などでコ
ミュニケーションを図っているが、参
加している人を見ると、なぜか鉄道好
きな人が多い。缶ジュースの話がいつ
の間にか鉄道の話になることがあるが、
誰も違和感を感じないのである。また、
鉄道路線の乗りつぶしや撮影旅行のお
土産で地域限定の缶ジュースをいただ
くこともあるし、鉄道趣味が高じて鉄
道関係の仕事をしながら缶ジュースの
収集をしている人もいる。
 考えてみると飲料趣味と鉄道趣味、
共通点がたくさんある。飲料にはコー
ラ、コーヒー、紅茶、お茶などのバリ
エーションがあるように、鉄道車両に
は機関車(蒸気・電気・ディーゼル)、
電車、ディーゼルカー、客車、貨車な
どの種類がある。飲料会社もコカ・コ
ーラのような大メーカーがあれば、地
方の小メーカーもある。鉄道会社もJ
Rのような全国規模の会社があれば、
地方の私鉄もある。飲料にはイベント
開催時の記念缶があれば、鉄道には記
念切符がある。このように、趣味の対
象となるものが飲料と鉄道はとても似
通っている。よって、鉄道趣味の世界
から飲料趣味の世界に入りこむことが
そう難しくないのだろう。
 そして最近の趣味活動で必須なのが
インターネット。鉄道趣味人でニフテ
ィの「鉄道フォーラム」を知らない人
はモグリである。ここには鉄道趣味に
関する全てのテーマが網羅されている
と言っても過言ではないだろう。ちな
みに、鉄道フォーラムで知り合って結
婚し、新婚旅行のために特別車両で臨
時列車を出した夫婦が県内に住んでい
る。余計なお世話みたいだが、その列
車に同乗して人の新婚旅行について行
った人もいたそうだ。
 飲料趣味も、その人数は鉄道趣味に
比較すれば非常に少ないが、北海道か
ら沖縄までの飲料趣味人がインターネ
ットを介して情報を交換している。私
も含めかつての飲料趣味人は、身の回
りに同じ趣味を持っている人がまず存
在せず、また、マスコミにでも紹介さ
れれば仲間作りができるのだろうが、
そういう事も無く、一人で活動するし
かなかった。インターネットで同じ趣
味を持つ人がいることを初めて知るの
であった。逆に言うと、インターネッ
トが存在しなければ仲間作りができな
かった趣味とも言えるだろう。やはり
趣味というもの、同好の士がいないと
どんなに素晴らしい(?)趣味でも心
配になるものである。
 もう一つ、飲料趣味と鉄道趣味の共
通点がある。家に籠もっていては何の
情報も得られないこと。鉄道は屋外を
走っているし、清涼飲料水も自販機や
スーパー、コンビニを巡らないと情報
を得られないことである。インターネ
ットで情報が得られたとしても、味は
実際飲んでみないとわからないし。そ
こから考えると、鉄道趣味も飲料趣味
も、アウトドアが主なフィールドなの
で、ある意味健康的な趣味だと言えよ
う。
 先程も触れたが、飲料趣味と鉄道趣
味の大きな違いを述べておこう。それ
は、趣味人口が桁外れに鉄道趣味のほ
うが多いこと。これは歴史の長さが全
然違うので仕方がないことだとは思う
が、飲料趣味ももっとメジャーな趣味
になってほしいと、飲料趣味者の一人
として願うばかりである。

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