そふとどりんく・とーく 第12回

 缶コーヒーで町おこし

 昨今どこの自治体でも町おこし・村
おこしを行っているが、お金をかけた
のに効果が無かったり、一回きりで終
わってしまうものも多い。今回は、大
きなお金をかけなかったのに、町おこ
し村おこしになってしまった例を紹介
したい。もちろん私の書くことだから、
「清涼飲料水」という非常に偏向した
フィルタを通してではあるが。
 まずはお金をかけずに新潟市を有名
にしてしまったものを紹介したい。そ
れは「イタリアン」だ。ここ最近、新
潟発の全国的話題として、誰もがご存
知だと思う。ちなみにイタリアンとは
イタリア料理ではなく、新潟市ではみ
かづき、長岡市ではフレンドが販売し
ている洋風焼きそばでの事であること
は新潟では当たり前の話である。(サ
ークルKでも販売しているが、これは
通に言わせると邪道らしい)
 イタリアン自体は発売から四十数年
経っており、新潟では文化祭バザーの
定番メニューとなっているが、最近で
は大阪にできた麺のテーマパークにみ
かづきが出店していたり、ゴールデン
タイムのテレビ番組で紹介されたり、
また、有名人が新潟まで食べに来たり
と、全国的有名食になってきている。
 イタリアンの普及は、ワールドカッ
プやアルビレックスの試合観覧で新潟
に来た観光客が広めたという説がある。
決して自治体がプッシュしたわけでも、
大企業が多額の宣伝費を使ったわけで
もない。つまり、実力ある商品と伝統、
ほんの僅かなチャンスがあればいくら
でも名物はできるのである。
 さて、本題の缶コーヒーによる町お
こしについて紹介したい。それは岩手
県の岩泉町にある竜泉洞という洞窟の
名水を使った「竜泉洞珈琲」である。
 当初は普通のお土産品だったようだ
が、缶コーヒー飲み比べ同人誌(毎年
その年に発売された缶コーヒーのラン
キングを決めるというその筋では有名
な同人誌であった)が、ある年の缶コ
ーヒーナンバー1に決定したことで、
事態は急展開した。販売者が知らない
うちに有名になってしまい、製造が追
いつかないほど売れてしまったのであ
る。その話は地元の新聞に紹介された
り、首都圏のラジオショッピングでま
でが「日本一うまい缶コーヒー」とし
てケース販売したのである。これも、
実力と僅かなチャンスが一本たった百
二十円の缶コーヒーを全国区にしてし
まったのだ。
 同様の事象が、青森県むつ市の「む
つショッピングセンター」が地元民向
けに販売した安売り用缶コーヒー「下
北珈琲」でも発生した。これも結果と
して地元の名産品となってしまった。
首都圏で行われた全国名産品フェアで
「むつ市名産品」として大々的に販売
されたりもしたそうだ。もう一つ青森
では奥入瀬渓谷の水を使った「奥入瀬
珈琲」というものがあったり、山形で
は「月山珈琲」というものを販売して
いたことがあり、これらの事から考え
ると、東北地方は缶コーヒーで町おこ
しを行っていると言えよう。
 では、新潟でも缶コーヒーによる町
おこし・村おこしが実現可能か考えて
みたい。コーヒーと言えば必要なのは
水とコーヒー豆。まず水は栃尾市にあ
る「杜々の森の湧き水」や中条町乙の
「どっこん水」がある。その他にも名
酒のあるところ名水があると言われて
いるので、水には事欠かないと思う。
 次にコーヒー豆。新潟とコーヒーと
は無関係な気もするが、喫茶店に卸し
ている大きな焙煎業者が何社かある。
駅南にも焙煎工場があり(ここは小売
もしてくれる)、前を通るとプーンと
コーヒーの良い香りがする。頼めば、
「新潟ブレンド」なるコーヒー豆をブ
レンドしてくれることだろう。
 あとは製造してくれるメーカーだが、
新潟県内の企業で缶コーヒーを販売し
ている会社とかつて販売していた会社
が各一社づつある。製造・販売のノウ
ハウを持っている会社があれば、新潟
発の地酒ならぬ地コーヒーは実現でき
ないことは無いだろう。
 東北以外で街の名前の付いた缶コー
ヒーを探すと、「ヨコハマコーヒー」、
「神戸居留地珈琲」、「夢・大田コー
ヒー」(東京都大田区の商工会が作っ
た缶コーヒー)などがある。これらの
缶コーヒーの共通点は「港や空港があ
る街」だ。つまり、海外との玄関口に
は缶コーヒーがあるのだ。これから考
えると幕末開港五港の一つであった新
潟港に缶コーヒーがあってもおかしく
ないと思う。いや、缶コーヒーを作っ
て、横浜、神戸に肩を並べて欲しい。
まだ函館は缶コーヒーを作っていない
のだから、せめて函館に先んじてほし
いと思っている。

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