そふとどりんく・とーく 第2回

 同棲する自販機たち

 前回の原稿、単発だと思って書いたのだが、
後日、主筆の小船井氏から「連載だよーん」
とのお言葉。二回目があるとは全然思ってい
なかったので、何の準備もしていなかったが、
何とかネタをひねり出すことができたので、
再び駄文をご覧に入れたいと思う。

 私に限らず、缶ジュースの自動販売機とい
うものは、道端にいくらでも並んでいるもの
というのが常識だと思う。通りを歩けば必ず
一台は視界に入ってくるし、いろいろなブラ
ンドの自販機が何台も並んでいることもある。
 東京を中心に缶収集を行っていた頃は、そ
れが当たり前だと思っていた。東京駅前にあ
る八重洲ブックセンターの脇には、今もそう
だが、自販機国家ニッポンを象徴しているか
の如く、多数の自販機が並んでいた。

 新潟にも自販機がたくさん置いてある。仕
事場のある新潟駅南も、数十歩おきに自販機
が立っている。こんなにたくさんの自販機が
あるのに、採算が取れるのか不思議である。
 ところが、その当たり前が当たり前でない
ということがわかった。両親が東北に旅行に
行った際、新潟に無い缶ジュースを買ってく
るよう頼んだが、「自販機が見当たらなかっ
たので、何も買ってこなかった」と言われた
のだった。こんな筈ないだろうと思ったが、
その後各地に旅行して、それが現実であるこ
とがよくわかった。

 地方都市ならいざ知らず、大阪や札幌とい
う大都市でも自販機はあまり置いていないの
だ。ある関西限定商品を手に入れようと思い、
大阪ナンバまで行ったが見当たらず、なぜか
近郊の高槻市で見つかったくらいだから。す
なわち、「首都圏と新潟以外は自販機をあま
り置いていない」のである。
 東京についてはおぼろげながら理解できる。
世界有数の大都市だから、需要も供給も多い
のだろうと。ところが、新潟についてはどう
しても説明がつかないのである。風土的に超
保守的な新潟に、缶ジュースの自販機が他の
地域に比べて大量に置いてあるのだろうか。

 自販機と言えばコカ・コーラの自販機を思
い浮かべるだろう。ということで、新潟にお
けるコカ・コーラの進出について調べてみた。
 営業開始当時、コークの営業マンは試飲用
コーラを持って新潟県内を回ったが、試飲し
た人たちは「甘い醤油」だと思い、「こんな
真っ黒い液体が売れるわけ無い」という意見
を言ったそうだ。ところが蓋をあけると、三
国コカ・コーラの担当する埼玉・群馬・新潟
の三県の中で一番の伸び率を示したらしい。

 「新潟人は東京から来た物に弱い」という
ことも理由の一つだろうか。当時のコカ・コ
ーラがCMキャラクターに採用したのが加山雄
三。加山雄三と言えば東宝の「若大将シリー
ズ」。そして若大将といえば苗場スキー場。
(ちなみに、このシリーズで青大将を演じた
田中邦衛もコロナの冷暖房器具の宣伝に出て
いるので、新潟と縁が無いとも言えない)
 テレビコマーシャルで若大将の飲んでいた
あの飲み物を、苗場じゃないけど地元のスキ
ー場で一服の時に飲めば、君も俺も若大将の
雰囲気が味わえる、冬のスキー場で飲めるん
だったら、夏は浜茶屋でも飲みたい、喫茶店
でも飲みたい、隣のお兄ちゃんやお姉ちゃん
が飲んでいるんだったら、小学生中学生の僕
も私も飲みたい、という感じで伝播していっ
たのではないかと思う。
 これでコーラの普及した理由(屁理屈だけ
ど)がついたので、今度はなぜ自販機が多い
のか考えてみよう。もう一度「新潟の風土」
ということに注目してみたいと思う。

 新潟人気質といえば「引っ込み思案で辛抱
強い」というのが真っ先に思い浮かぶ。東京
で風呂屋と豆腐屋に新潟県出身者が多いとい
う話はよく聞く話だ(現在では漫画家とコン
ピュータ技術者らしいが)。「話し下手」と
いうのも、これらの職業を選択せざるを得な
い理由であろう。売る側はセールストークが
うまくできないし、買う側も自分の欲しい物
についてはっきりと述べることができないの
だから商売が成り立たないわけで、それだっ
たら対面販売のいらない自販機にしてしまえ、
という考えも出てくるのだと思う。自販機だ
け店頭に並べて、店は閉まっているというケ
ースもよく見かけるし。こんなところが、新
潟にジュースの自販機が多い理由だろう。

 もう一つ興味深い数字がある。それは「大
学生の同棲率」である。数年前の調査で、新
潟大学の学生が同棲率日本一、という話を聞
いたことがある。娯楽の全く無い五十嵐砂漠
(と言っても移転直後に比べれば今は天国だ
が)で一人で暮らすよりは、同居人がいたほ
うが楽しいわけだ。
 大学生の同棲率日本一の場所だから、自販
機も同棲相手を求め、並んで立っている、と
いうのが、新潟で自販機が並んで立っている
ことが多い理由だろうか。これが一番眉唾モ
ノの話だが、一番真実味のある話のようで。

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